炎の遊戯
ただのみきや

一枚の写真が燃えている
黒い鉄の花びらの上
ひらめく炎をその身にまとい
そりかえる
水蒸気と煤があいまって
白くにごった煙とともに
封じられた時間も漏れ出して 
霧散する
平面の中の奥行 かつて
隣りあう時と場所に通じていたはずの
季節を被ったままの景色が
光に彫刻された懐かしい顔が
不滅とも錯覚され
二次元へ沈められたフォルムが
消失し
ひと匙にも満たない灰


一通の手紙が燃えている
炎は 便箋と 記された文字を
込められた 思いを
読むたびに少しずつ姿を変えながら
こころに訪れた人
その不可視の 眠れるからだを
静かに とても美味そうに 食んで
見えることから 去り過ぎる
すばやい有り様
感情すら手をこまぬいて
――魅了される
瞬く間の白煙の立ち振る舞いに
なにかを 見たような 
思いすら 形を決めかね
空白だけが 積み上がり


記憶の造形は驚くほど
まるで意地悪く
よく見たい時はぼやけさせ
見たくないものほど写実的に
よけいな陰影まで添えて差し出し
たぶんすべてが
予兆であり預言
だとしなくても
炎の向こう
十分に暗い海だから
漂着物が
水死体が
流れついて
得体の知れない蠢くものが
憑依するのだから
謎めく嘘で心から
愛する人の死を悼み
そこに置き去られて朽ち果てる
花輪の役目を果たしたい
そのための練習たぶん
これらすべての行為が
などと嘯いて 





            《炎の遊戯:2017年2月11日》











自由詩 炎の遊戯 Copyright ただのみきや 2017-02-11 18:36:16
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