黄色い海があってもいいでしょう
膠を火にかける、独特の匂い、かき混ぜながら換気扇を回し
くつくつと沸く鍋底を見つめる
足りない色を数えて
描けない絵のことを考えていても仕方がないね
のめり込んでいる間は忘れているのに
いつの間に夜、部屋の中は青く暗く
ただイブクラインにでもなったかのように
眩しい光の片鱗を覗き見て
往復の切符を買えばいいのだけれど
申し込みの確定ボタンを押せずにいる
あまりに強い光に焼け焦げていく人たちが、
片道の切符を買うのを見ていました
大丈夫と不明瞭なやさしさをくれる家族
眠る部屋、用意された食事、それはつまり胎内への回帰
とかそれっぽいこと言い始めてさ、みたいな、たぶん、そんなかんじでしょ
ワンクリックで塗りつぶし、液晶の色の名は数値でしかない
それでも戻るボタンのない世界を不便に感じるようになってしまった
絶望や、痛みがわからないまま光っていて
ただ、芸術の意味とか、そういう、いけてる風潮とかを排除して、
模倣のようなその行為に新しい意味を見出してよ
それは祈りにも似ている
白熱灯の灯る部屋、指で溶いた絵の具
ざらつく粒が滑らかになるまで感覚とぎすまして、
乾いた刷毛と礬水引きをした鳥の子紙
筆を紙に下ろす、それだけで