さようなら言葉よ
もり

さようなら 言葉よ
いろいろあったけど
楽しかったぜ お前のせいで
いや、おれのせいか
裸でこのせかいに降り立った
お前をお前のままで
いさせるためには
風はあまりにも冷たく
地面はあまりに固かった
ひとのお下がりを
何のためらいもなく着て
楽しそうなお前が
たぶん相当に
おれは悔しかった
万人受けはしなかったけれど
その憎めない表情はときに
おれ以外の人々も救った
そして 何よりおれのことを
最優先に いちばんに救った
自慢ではあった
誇りではあったのに
自慢だった
誇りだったから
だんだんと距離を感じずには
いられなくなった 今
その考えに取り憑かれている
お前は何にも変わってない
ただ気付いてきただけなのに
おれはひたすらに
変わってきた
何ひとつ気付かずに
言葉よ お前のことを考えるとそうだ
お前が望まない
堂々めぐりの夜が
またやってくる
そこから抜け出せなくなる
たぶん少し疲れたんだ
果てしない銀河
流星
母なる海
鼓動
清らかな水の流れ
深緑の森
クリームソーダの空
春夏秋冬
東西南北
どこへでも
連れ去ってくれた
それには 感謝しかない
感謝しかない けど
おれは
触れたい
手を振って
お前がくれた お前が
生れながらに知っていた
数々のイメージに
直に触れてみたい
そして いつか
初めて



さようなら言葉よ
泣くな、
ここで、お別れだ。


自由詩 さようなら言葉よ Copyright もり 2017-01-10 01:53:48
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