穴を掘る
オイタル

穴を掘る
私たちは穴を掘る
深く
硬い地面に埋もれた
季節の輪郭をなぞるように

穴を掘る
私たちは穴を掘る
さらに深く
地中を飛ぶ鳥たちの
淡い心臓に届くように

手紙を拾う
私たちは手紙を拾う
そこから
穴の中から 十年前
私たちが書いた手紙を

種を蒔く
私たちは種を蒔く
指先で
手紙のなかに沈んだ種を
穴の中のくすんだ壁に

三十年後 種は季節の輪郭を尖らせ
五十年後 種は鳥の心臓を波立たせ
私たちは そしてまた
穴を掘る

テーブルに座り
穴を見上げる 私たち
これからどうしようか そのすべを
知らないまま
けれども

二メートル深い底の底の
一メートルと巡らない
回廊に佇んで


自由詩 穴を掘る Copyright オイタル 2017-01-07 15:39:40
notebook Home 戻る