越冬
星丘涙

深々と雪が降り積もる
かじかむ手に息を吹きかけ
ウイスキーで体を温め
スタンドの灯りで短編小説を読んで過ごしていた
時計の針だけが闇の中に響き
孤独に耐えていたあの冬の夜
寂しくて気が狂いそうになり
両手で顔を覆っては哭いた
死に神が白い天井に張り付いている様で
不気味だった
時が歪み永遠の真夜中を彷徨いながら暮らしていた
全てを失い
まるで宇宙空間に酸素ボンベひとつで放り出された気分だった
誰にも助けを求められず
また誰にも助ける事は出来なかった
一人きりの部屋に帰るのが怖かったし
反逆者への裁きは厳しいものだった
いつ死を選択してもおかしくはなかった
みんなもそう思っていた
死んでも地獄に行くのであろうと信じていた私は
生き地獄の中でもがいていた
それでも
雪は次第に降りやみ
肩に降り積もった雪も
春の陽の光を受け溶け始め
ほんの僅かな憐みの光を頼りに
あの人のもとに行き
あの人の愛にすがり付き
赦しをいただいた
今は春の陽の光の中
安らいでいる
こんな日が来るとは夢にも思はなかった


自由詩 越冬 Copyright 星丘涙 2017-01-06 18:05:42
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