枯野原
花形新次

アパートの
大家さんのところに
3号室の鳥井龍夫さんの
部屋から
異臭がするという
苦情が
寄せられた

異臭は徐々に
強くなっていった
タイのスーパーの
山積みになった
ドリアンみたいに

大家さんは
親も同然と考えていたから
子供同然の3号室の
鳥井龍夫さんの身に
何かあったのではと
心配で
合鍵を使って
部屋の中に入った

するとそこには
首と胴体が引きちぎられた
鳥井龍夫さんの死体が
転がっていた

死体の真上には鴨居があり
ロープが巻かれていた

二三日は
ぶら下がったまま
もったのガチョウ、もといカモ知れない
が、やがて首の肉が腐り始めて
重みに耐えられなくなって
ちぎれて落ちたのだろう

床は、鳥井龍夫さんの頭と胴体
糞尿と体液まみれで
足の踏み場もなかった

少し離れたテーブルの上に
遺書と見られる書き置きがあった

枯野原自称詩人で死んで行く
鳥龍

死んで行くのは勝手だけど
よくも理由あり物件にしてくれたな!

大家さんは鳥井龍夫さんの
首を思い切り蹴った



自由詩 枯野原 Copyright 花形新次 2017-01-05 21:18:55
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