庭の柴木の陰に
オイタル
庭の柴木の陰に
たくさんの夜がこぼれていた
薄い産毛の生えたまだ若い夜から
硬く曲がった血と血の夜から
とりどりの夜が
折れて重なる か細い枝の隙間に
埋まっていた
空の低いところ
散らばる冷たい砂糖菓子の風
黄色い壁をなぞっていく
(そら、いくぞ)
ぞわぞわと歩みゆく夜 そして
裏切り者の風のスパイ
寂しげな妻の夜があった
いたたまれぬ犬の夜
行きつけぬ老いた夜があった
薄い背中に語れぬ夜も
道の端の蒼い暗渠をよけながら
おぼつかない足取りで進む
たくさんの夜たちの
あとをつけてはいけない
夜は背中でお前を見るのだ
裏庭の柴木の陰に
たくさんの夜の足跡が
消えていく
たくさんの たくさんの