あかい石榴
水菜

抉り続けても得られることはないのだと知っている
あかい石榴を指で抉り出してはぐしゃりと潰したらたらと零れたそれは食卓の上にぺしゃりとへばり付く

抉ってはえづき抉っては辺りに散らした石榴の一部を
ぐしゃりと裸足の足で踏み潰しては抉り続ける

滲んだ赤を吸った指先
抉った先を深く広げて
深く深く更に深く抉り続けて

あかい石榴が染み付いた目の奥に潰れた石榴が眠っている
目の下の熊が黒く燗れて石榴が甘い腐臭を漂わせている

赤い食卓
石榴の花は

死んだ魚の目のように空ろに揺れるその奥にほんの少しの石榴の花

あかい石榴が消えた時
あなたは植物になるでしょう

いつしか石榴の花を咲かせて
あなたの花はきっと美しく赤く赤く

裸足の足で石榴を潰し指先で抉ってはたらたらと食卓に散らす


















あなたは泣いている


自由詩 あかい石榴 Copyright 水菜 2016-12-08 03:23:13
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