線路/梯子
rabbitfighter

数分で血が固まり数日で閉じてしまうぐらいの浅い傷を身体に並べて、君は梯子を架ける。だけど君は横になっているので、それは線路にしか見えない。それから俺は、機関車トーマスのおもちゃを用意していなかったことを君に詫びる。

すまない。

穴の空いているコインと備え付けのマッチを使って車輪を作る。浴室にあったスポンジを指で千切り取って車体にする。かなり歪だけどないよりはマシかなと思って。マッチをもう一本、今度は車体の上に突き刺して、これなら機関車に見えなくもない。

だけどこれは梯子なんだと抗議する君を尻目に、俺は機関車を走らせる。君が起き上がると機関車は、空に向かって昇っていく。

俺は、気持ち良くなるのが大好きで、それには身体だけじゃ物足らないから、いつもそうして、脱線してしまう。すまない。君の線路が、あるいは梯子が、どこまでも長く、長く続けばいい。野を越え山を越え腋を越え、谷や川や畑や海や街や砂漠や城壁を越えてどこまでも。


自由詩 線路/梯子 Copyright rabbitfighter 2016-11-28 22:32:18
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