御前崎
5or6

幼き子を抱き上げる家族
砂浜に残された砂の山
流されて
海岸に忘れた玩具の車が
寄せては返す

クラクションが鳴り
波の音だけになる頃

ふと
あなたを思い出す

愛することができるだろうか
愛されることを
いつか
あんなにも
側に、側に、側に、側に、
ただそればかり心をそめて
戻りゆく魂の浮島
最後のあなたは深い息をしていて
それはため息じゃないことは
幼かった私にも解っていました

知りたいものが増えて
いらない本ばかり増えて

訥 訥 これは、、とつ

唇を閉じて
思いを
言葉を
心に結ぶ
御前崎の岬に行きたいと呟いた
あなたの為に買った
折り畳み椅子

今、座って

変わるもの
変わらないもの
松の緑のように
穏やかな魂の浮島

今、眺めて

人は尊く
いつかは消える

海を灯すあの光のように
引き寄せられた波の泡のように
いつも家で迎えてくれたあなたのように
砂で作られた防波堤のように
あのときのサイレンのように

おばあちゃん
おばあちゃん

今、私は
あなたの人生の半分を生きましたよ

変わるもの
変わらないもの

150号線の先に見える富士
誰もこない砂浜は

いつかのあなたのもの

やさしさはいつも潮風の中に
やさしさはいつも潮風の中に
力強い風の中に

面影を残して


自由詩 御前崎 Copyright 5or6 2016-11-22 22:34:36
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