鴉なぜ、鳴かないの
もっぷ

わたし何も見えなくなればいいのに
聞こえなくなればいいのに
云えなくなればいいのに
感じなくなるのが一等いい(たとえば空腹)
そんなことばかりを考える鴉は
鴉のなかでも異端で
おんなじ黒い翼のはずが
なぜかいつかしら目立ってしまう
願うばかりじゃなくなって さすがに悩む それでやっぱり
わたし何も見えなくなればいいのに
聞こえなくなればいいのに
云えなくなればいいのに
感じなくなるのが一等いい(それは恥ずかしさ)
とても恥ずかしくて いたたまれずに
ついに翼を折りたたむ そのままとりあえず歩いていたら
感じたくない空腹を覚えやすいようで
やっぱりつらい せっかく悩んでも どうしたっても
こうしているのって大変なこと
それならすこし休もう と
生まれて初めて横たわってみた(たとえば、と思って)
たとえば、と思って横たわったそのことがまた
かえって目立ってしまう
どうしていいのかもうわからない/そのとき翼が頼んだ
羽ばたきたい!
、謝ると その鴉は 世界に耐えることの限界にきて
ふと、できたことは
感じたくない空腹を感じ続けることだけでした



自由詩 鴉なぜ、鳴かないの Copyright もっぷ 2016-11-19 15:35:17
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