『よるのうた』
葉月 祐





春が足元に
一夜限りの花びらの星座を描いた



夏の夜の夢は
浅く長い ひとつの戯曲のようだった



秋に降る火球の
行き着く先は誰も知らないまま



冬の星を瞬かせる
純白の結晶の群れと 幻想的な月光




わたしを揺さぶり続ける夜の姿は
    絶え間なく流れ続けている
    よるのうたのしらべ


疲れた体を 夜の灯がそっと癒して
傷ついた心は 夜の静けさに包まれる



幸せと悲しみや
喜びと苦しみの曲を
誰もいない夜の世界で
毎夜のように口ずさむ


わたしはいつも
月の真下に立ち
黒いシーツの描くきらめきの模様の
微細な移り変わりを眺めている


一日として
同じ音楽を奏でる事はない
三百六十五分の一の
今夜限りのメロディーが
今この瞬間も 演奏されている




誰のものとも重ならない
わたしだけの 愛しいよるのうた


すべての夜が この心を彩り照らしていく














                     2016/11/04/


自由詩 『よるのうた』 Copyright 葉月 祐 2016-11-18 16:43:40
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