めぐり 哀歌
ただのみきや

気忙しく男は高みから息を吹きかけた
後退りする光の中でいつまでも己の内を見つめ
色を失くして往く
女を見続けるのは正直もう嫌だった
白く
すべてを
終わりの先の始まりの
まだ始まる前の上塗りされたカンバスへ
死のような眠りで沈潜する
命を早く
つめたくあたたかく
包み込みたくて
昨夜 雨を霙に
そして雪へと変えたのだ
せっかちにも


翌朝は晴れ
薄化粧はすっかりとけて
水たまりが落葉を捕まえる
彼らは波紋で気持ちを伝えた


大きな柳がまだ青々とした枝葉をそっと揺らす
真珠もダイヤも及ばない
朝の光を含んだ無数の玉飾りが
ゆっくりと伝い 落ち
燃えるように 輝いていた

――朗らかな笑いも
涙がまだ乾き切らない微笑みにはかなわない
失ってまざまざと美しさは……


男は
女の終わりを見つめるだけ
女は
男のつめたい吐息を背に感じながら
深く己の内に没して往く
ただそれだけ
くりかえし
くりかえす
季節は
ひとつになれず
分かたれず
何度生まれ変わっても
ひとつになれず
分かたれず
背中を見つめ
背中で感じて




              《めぐり 哀歌:2016年11月12日》











自由詩 めぐり 哀歌 Copyright ただのみきや 2016-11-12 19:52:59
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