ほとんどすべての嘘
はるな



窓のうら側で夜が渋滞してる
過食症のねずみがカーペットに絡んで

おそろしいのは
そのすべて
海とか朝とかお皿とか
ありもしない思い出までが立ち上がって
わたしを抱こうとするそしてすぐに投げ捨てる
活けられた花焼かれた肉落ちた実震えている信号
「あ」 のかたちにあいた穴 駅 歩哨 唄

たしかにおぼえている
愛したり憎んだりした
月曜日には湯をわかし
金曜日にはシーツを干した
たしかにおぼえている
窓、そのむこうで
足ぶみをする夜たちを
さびしさで肥えたねずみを
汗で額にはりついた細い髪の毛を
たくさんの嘘とわずかな本当を、
あるいはほとんどすべての嘘を





自由詩 ほとんどすべての嘘 Copyright はるな 2016-11-12 17:11:57
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