ふるる

あのひとの背中に耳をあて
心臓の音を聞く

汗をかいては歩いていた
影は黒く
草は青く
恋をすれば
みんなが震える

電線にとまっている
鳥たちの口はとんがっていて
きびしいことを言ってくれそう
この手にとまってくれたら
相談したいことがある

いつも自転車で渡る小さな橋と小さな川
川の両側には桜並木
負けた人が橋から川を眺めたり
かわいい人が写真を撮ったり

めぐる季節のたび
桜の満面の笑みもいいけど
散った花びらの織物もいいけど
青葉もいいけど
枯葉もいい
冬はあんまり見ていない

背中は見ていて飽きない
なめらかで
あたたかい
冬ならくっついても平気

いつでも流れている川の
水面をすいすいと歩く空想
道がないなら
ここを行ったらいいんだ

外は雪になっている
静かなので
スープを煮る音もにぎやか
おたまの重みが楽しい

季節は変わり目がうれしさびしい
だからここにいてね
そんな君のために
背筋を伸ばして歩く




自由詩Copyright ふるる 2016-11-12 16:19:49
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