春風音
霜天

どうにもまだ遠いこと
そんな手のひら
迎えの来ないバス停は
その日も閉じたまま
窓際の階段は駅前で途切れる
どうにもまだ遠いこと
私は少しだけ、溶ける


ポケットの中の余白を
手紙の下書きに使ってみる
冬が溶けると辺り一面が水没する
そんな
泳ぎの練習をしないといけない
クロール
緩やかな、手付き


少しずつ私たちが、溶ける
しなやかな深呼吸
その中の風音に、むせてしまう
手に取ったほうきを
2階の窓から
溶け出した私を掃き出す
もうすぐだ


少しずつが、溶ける
濡れた手のひらで握り返す
遠い空では、水没した街で
懐かしい人が
ポケットの中の零れた言葉を
待ち焦がれ

また少し、溶ける


自由詩 春風音 Copyright 霜天 2005-03-03 01:55:21
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