金の歯に熟れ柿
田中修子

箱をあけたら金にひかる歯がころり
うるといい値になるそうだ

しゃれこうべしゅうしゅうと
お墓の下でなげいとりゃせんかしら
おれの歯ぁどっかいったぁって虫食い歯でさ
男かしら女かしら
きっと因業もんだったのさ

生きるということはそのまま収容所みたいなもんか
体に霜がおりそうな雨の日だこと

父がくれたじゅくじゅくに熟れた柿を吸う
しみるわたしのやすっぽいつめものの歯は
きっとなんにものこさずきえる


自由詩 金の歯に熟れ柿 Copyright 田中修子 2016-10-29 19:10:44
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