バス待ちの青年
葉月 祐



古びたバス停で 
僕を乗せてくれる
優しさを持つバスが来るのを
かれこれ数日は待っている


そろそろ
待ち疲れてしまいそう
もうすぐ
自分の中の最後の糸も
切れてしまいそう


この数日の間に
燃えそうな朝の訪れを見た
雨上がりの地面から
虹がにょきっと はえるのも見た
夕焼けと夕暮れが繋がり
舞台でしか観れない様な
赤と青のグラデーションを
空に映すのも見ていた

行き交う人々の流れや
走り去る車達
猫の親子が散歩していたり
買い物帰りの老夫婦
デートを楽しむ学生達
仕事帰りのくたびれたスーツ姿

今までにも見てきた
日常らしい日常の数々を
数えきれない程見ていたよ


それなのに
僕が乗れるバスだけが
来ないんだよ

なあ どうしてなんだ

それは日常には含まれません、
とでも
誰かが言いたいのだろうか

そんな訳あるか





ふと気づくと
誰かがバス停に
傘を置いていってくれたらしい




その傘が

僕に乗れるバスは
未来永劫やって来ないという事を
告げているかのように思えた














自由詩 バス待ちの青年 Copyright 葉月 祐 2016-10-29 16:58:21
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