筆絶した空
あおい満月

筆絶した空に浮かぶ星は、
迷路をつくるかのように、
地に落ちていった。
私はその落ちた星たちを、
拾い集めてことばをつくった。
死にながら生きていたことばたちは、
息をしながら低く輝いていた。

筆絶したパズルの上に、
赤い花びらを散らした。
急に血を流したくなって、
カッターで指を切った。
血はパズルの上に滴って、
声になって空間に浮かんだ。
浮かんだ声を唄にして、
詩をつくった。
詩は目を閉じたさかなになって、
深い声でないていた。

筆絶したカンバスの上に、
赤い林檎を置いた。
林檎は白い壁に食べられて、
壁を赤くした。
赤い壁に爪でことばを刻んだ。
ことばは音を孕んで、
唄になって詩を産んだ。
詩は血を引きずりながら、
黒い字になって赤い壁を駈け降りる。

筆絶した私の上に、
降る雨は赤い。



自由詩 筆絶した空 Copyright あおい満月 2016-10-26 21:16:49
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