いのちの踊場
印あかり

あの踊場へ落っこちた心

禁酒を破った頭、くらくらして
窓からぐっと手を伸ばす
亀虫の死骸が畳に転がった

白いのに暗い部屋
生乾きのパジャマの臭い
花瓶に生けたおとうさん、おかあさん
とめどなく血を流すこの穴の
痛みをアルコールが抱いている



あの踊場へ沈んでいった心
浮かんでこないものが愛おしい

やがて訪う虚ろな誰かが
わたしの背を押すのだろう
けれど、
そうっと身体を引っ込めた

あれはもうわたしのものじゃない
誰かに輪郭を与えることが
あれの使命よ、さようなら


自由詩 いのちの踊場 Copyright 印あかり 2016-10-26 19:37:21
notebook Home 戻る