底抜け舞台
ひだかたけし

夜の帳おり
扉が開いていく
次々と開いていく
が、
何もない
真っ白な虚、真っ白な虚
みっしり充満するばかりだ
俺は恐怖に襲われ
恐慌の際の際で
時の矢となり
疾駆疾走しながら
一気に突き破る、扉を
墜ちていく肉塊、地の窪み
昇っていく霊魂、天の深み
底という底に
亀裂、垂直に走らせ
天地を貫き
終いには
己の意識の底割れ底抜け
ひゅうひゅうひょうひょう
空を切り風に乗り
ギリギリで持ち堪えながら
俺はみる、内なる果ての涯てに

紫の影、湖に
ターコイズブルーのねっとりとした湖に
無数の紫の影、声響かせ歌い舞い踊る
それらそれら
遠近を欠き
交差交錯混合したり
反発反攻対立したり
ターコイズブルーのねっとりとした湖に
無数の紫の影、声響かせ歌い舞い踊る
燃える光の眼差すなか!

  ☆●☆

[十月十五日土曜]
俺は紙に筆圧強くそう書き
覚醒夢の光景声残響するなか
浮遊したままの朝の意識を
頭蓋に脳髄に引き戻そうとスル 

(意識、宙吊りのブランコに乗り

  ゆらり揺れ奥まったまま

      この界は漠と遠く)

息、深く吸っては血を創り
息、一気に吐いては血を壊し
左胸に手を当て
鼓動静かに脈打つ感触に
[俺は生きている 俺は未だ生きている]
差し込む午前の陽光に小さく声放つ

地上十四階、ベランダに出てみれば
眸、燃え輝く百の眸ガ
青に青を塗り重ね
アオ底光りする天空から
降って来る降って来る!





自由詩 底抜け舞台 Copyright ひだかたけし 2016-10-22 19:01:45
notebook Home 戻る