転〇生
ひだかたけし

通り過ぎてゆく人々
通り過ぎていった人達
何なのだろう、何だったのだろう?
あれらこれらの出来事が
今は嘘みたいに消え去って
僕は嘘みたいに落ち着いて
ただ目を閉じる、ただ目を閉じる
あれらこれらの関わりが
一つ一つ記憶として定着し
沈み乾いてゆくのを見つめながら

(高曇りの空にばら蒔かれた
無数無限の小枝
パキッパキッと折れ響き)

静かな時流に銀河の腕は
ゆっくりゆっくり旋回し
渦巻き移動し遠去かる
その銀河の一角で
刻み込まれたもの、刻み込んだもの
近づき惹かれ抱きしめ裏切り
裏切られ離れまた近づき
その連鎖のなかで<私>はこれからも
生まれては死に、死んでは生まれていくのだろう
内は外となり外は内となり
ますます透明になって澄み渡って
深まる青に銀の絹糸をぴんと張り
いつの日にか
記憶の奥の億を手繰り寄せるマデ
遠去かる宇宙の声を木霊を
この現にハッキリと聴き取るマデ

(確かな意識持ち
広がり続ける意識持ち)

この眼球の奥で踊る黄金
煌めく純粋な光りの輝き
静かな静かな秋の日に
金木犀の香に包まれ
私は静かに瞑目し
枯れた井戸を覗き込む





自由詩 転〇生 Copyright ひだかたけし 2016-10-21 15:52:37
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