黒い瞳の君へ
レタス

黒曜石の瞳を閉じて
秋風とともに往ってしまった君は
そろそろ成層圏あたりにいるはずだ

ただ
ぼくにできることといえば
天空にそびえる岩壁をノロノロとよじ登るだけだった
君に届けとばかり
ハーケンを打ち鳴らし
その名前を叫ぶだけで
君は振り向いてくれもしない

あれほど求め合い
抱き合っていたはずなのに
脇腹をロンギヌスの槍がぼくたちを貫き
硝子のように砕け散ってしまった

往ってしまった君と
地に張りつけられたぼくとの距離は
遠のくばかりで
眩しい太陽がぼくをあざ笑い
月は冷たい眼差しで歌う

昼夜の境もなく
ノロノロとぼくは君を求め
晴雨の境も無く
ぼくは君の名を叫び続ける

たとえ救いはなくとも














自由詩 黒い瞳の君へ Copyright レタス 2016-10-20 16:21:21
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