ぼくの内側から崩れていく海
白島真


 溢れる海の思想おもい
 透いた生命の鼓動にのせて
 ぼくはきみに語りたい
 あつい 熱い視線の息吹に恋い焦がれ
 ひとり 沈んでいった人たちのことを
 ふるえる大気の指先で
 海!と叫んで
 柔い音楽の真綿を
 包むように消えていった人たちのことを

 
 ぼくは崩れていくものたちの
 あの優しさに凍ったが好きだ
 究極に迫ろうと
 それゆえ淋しさに縁取られた
 あの声なきこころのシュプレヒコール
 憧憬あこがれに 憧憬ゆえに
 ああ きみは何を失おうとする
 真夏の瞼の面影よ
 そして小さな光に乱舞する
 あやうい自身の影絵を きみは
 いつまで見続けていこうとするのか

 
 人よ いまはもう夕暮れに
 ぼくはしずかに気づき始めたようなのだ
 懶惰な生い立ちと
 生きる核にも似た野心の瞬き
 それでもいい! 陣痛のひととき!
 ぼくをめぐ
 どれも似たような気配のなかで
 感性は鳥肌立つ死の肉だ
 岩石いわおに滴る
 太古の匂いの激流だ

 
 いま冷たい祈りのように
 ぼくの内側から崩れていく海がある
                 





自由詩 ぼくの内側から崩れていく海 Copyright 白島真 2016-10-20 07:21:35
notebook Home