甕の底から
田中修子
お父さんは
甕にめだかを飼っています
夏 陽射しをまともに受け
お水ゆだってあえいでるめだかの夫婦
あんまり可哀そうで私
みどりのホテイさま浮かべたよ
めだかたちほっとして
こづくりできたのおめでただ
あたまのいいおにいちゃんと
はねっかえりのいもうとと
ひらりゆらぐ橙の尻尾きれいだな
ふふ 家族ってすてきだな
秋のはじまりお父さん
いっぱいに栄えたホテイさま
見栄えよくって刈り込んだ
その次の日しんと冷え
めだかはぜんいんのうなった
ただ ホテイさまだけがぷかぷかと
浮いていらっしってさみしいな
冬には甕は凍るでしょ
めだかの家族のお骨抱きしめ
ホテイさまひとりわらってる
甕は冬のそらうつして冷え鏡
春になったらおとうさん
またあたらしいめだか飼うのだろ
ふふ
おとうさん おかあさん
おにいちゃん いもうとのわたし
家族ってすてきだな
ペットショップを見てこよう
安くていいのをえらびましょ
むなぐるしくなりめをほそめて空仰ぐ
つめたくしずかな夜にはさ
みどりのホテイさまが浮かんどって気づいたんだよ
ここはそこで
わたしはめだかの骨なんね
どうりで肉も薄くなるはずね
ふふ
とてもよろこばしい家族のかばね