静かな滝
白島真


しろい大蛇が
裸体を取り巻いている
その人が男か女かはわからない
顔がすでにないようにも見える



とおくに滝があるが音はきこえない 
熱気のようなものが渦巻いている
暗緑色のむらがる蔦を
滝と見まちがえたのかも知れない



たべられて肋骨がむきだしになる
鍛えられた大腰筋 そして
脾臓、胃、横行結腸とはがされ
下肢がぴんと撥ねあがる



そのとき
わたしは熱い棺のなかに横たわっていて
ようやく滝は燃え盛る炎の音
そう気づきはじめた もう熱さは感じない



(註)ギュスターブ・ドレの版画から発想を得ました



自由詩 静かな滝 Copyright 白島真 2016-10-13 17:02:51
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