お子様ランチ

両開きのメニューにすっぽり収まった君の顔

新幹線のプレートを指さして

「これがいい」

って無邪気に笑う君

少年時代は特急から眺める景色みたいに一瞬で過ぎ去るけど

一つ一つ目に焼き付けて大人になって欲しい

いつの日か君も
お子様ランチを注文するのが気恥ずかしくなる年齢になるから

そんな僕の感傷的な気持ちなんかに目もくれず

君はドリンクバー目がけて走り出す

ついていくと抱っこをせがまれて

小さな両手でグラスを一つ掴む
君を持ち上げさせられる

学者がフラスコに液体を入れて実験するみたいに

君はグラスに好きなジュースを次々と混ぜて

茶色く濁った飲み物を作り出す

「これは何?」って聞くと

君は両手をあげて首を傾げる

席に着くとナイフとフォークで作られた停止線の前で

停車して君を待つ新幹線のプレート

「いただきます」と元気よく汽笛を鳴らした後

長靴で水たまりの中に飛び込むみたいに

君はスプーンでハンバーグのデミグラスソースをぺちゃぺちゃと飛ばす

ソース塗れの口まわり

汚れたら拭けばいいだけのことなんだよね

思うように動かないフォークにイライラして

小さな指の間に挟んでスパゲティーを頬張る君に

僕は苦笑い

ケチャップライスを半分残して

プリンに手を伸ばす君

薄黄色のプリンとその上に乗っかったカラメルソースは

いつの時代も変わらず仲良しで

少しホッとする

寝てしまった君を背中に乗せて家路を歩く

いつの時代も変わらず

父親の背中の上で
幸せそうに眠る子供を見かけるとやっぱりホッとする

家についてそっと君をベッドに置くと

君は何か寝言を呟く

一体どんな夢を見ているの?

そんな小さな手でフランス国旗を携えてさ










自由詩 お子様ランチ Copyright  2016-10-09 15:44:29
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