恋の詩4品
ふるる

ミルク



あなたの飲むミルクを温め直したい
胸からこぼれたビーズを拾い集めたい

広く高い草原へ
あなたの手を引っ張って
困らせたい

もう、なにを落としたって
かまわないんだよって
あなたのこと、このくらい想ってるんだよって
雲のペンで
青空に落書きしたい

あなたはミルクをひとくち飲んで
ふうっとため息

その風がさっき
草を撫でていったよ

私も少し凪いだんだよ

私は少し泣いたんだよ





お菓子の箱



お菓子の箱に耳をつけると
ささやきがきこえる気がする
お菓子の箱
耳をつけるのにいい大きさ

あなたの胸
耳をつけるのにいいくぼみ

きのう、
あなたのくちびる
あまかった

お菓子の箱
つやつやで
だいじにかかえて
ひとつだけ食べる
もうひとつ食べたいな

きのう、
あったばかりなのに
もうあいたい

だいじにね
かばんにしまう
だって
お菓子を箱ごともらったのはじめて

きのう、
あなたが言ったの
ぜんぶ、きみのもの

ありがとう

誰かをもらったの

はじめて





紅茶



「あ、私はニルギリ…」
と君は言い

「ニルギリってね、青い山っていう意味なの」
と君が言うもんだから

紅茶なんか待ってないで
君の手を取って
インドの青い山へ
逃避行したいけど

なんで僕は
乳母にしちゃったのかなぁ



 

幻想

 

君が小さく声を上げると
僕の肌は不思議に緊張する

眼差しを追ってみても
もうまどろんでいる
午後の教会のように
静かに
ばら色の壁と
古い木の椅子
屋根のひさしにツバメが巣を作り始める

君は蜂蜜のたっぷり入った紅茶が好き
白磁のカップで
君の花びらのような唇は
夜露を残してか
ふっくらと潤っている

やわらかな君を抱きとめるため
僕の肌は不思議に緊張する

白磁のカップは君のおばあさんがくれたもの
古いものをもらうと花嫁は幸せになるんだよ
僕は知っているけど
君は知らないという

やかんがささやきはじめるまでの間
あの幼い幻想がやってくる

君が好きなのは僕だけという幻想
幸せな





自由詩 恋の詩4品 Copyright ふるる 2016-09-30 11:11:54
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