よるのひるね
AB(なかほど)



夕方のラッシュに逆ろうて
工業地区行く電車に乗る

降りた駅ですれ違う人たちに
ご安全に 言うて
構内に入っていく
いつもの事や
ほら若い連中がまたはみ出して歩いてきよる
ご安全
の意味 忘れてもうたんか

いつからわしが言う側になってもうたんやろ

ニホンはモノづくりでなんぼの国や
ほんで
ここはモノづくり現場や
わしらは2交代やけど
昼も夜も製鋼所は
寝やへん

て言うてはった先輩
明日から夜勤はのうなってしまいます
なんかすんません
てわしらごときが言うても
せんなきことやけど

午前0時の昼ごはん
初めて食べたんは天ぷらうどんやった
あれはうまかったなぁ
最後も それにしとくわ

ほんで
いつものよう
仮眠室にもぐりこんだはええけど
あれこれせんないこと
頭ん中ぐるぐるしとって
最後のひるねはでけへんかった

ひと働きしたら
もうすぐ朝日が昇る
おつかれさん
おはようさん
ご安全に
おやすみなさい
いう最後の朝

ネクタイのラッシュに逆ろうて

ひるねでけへんかったから
ふらふらや
頭よりも心までも



即興ゴルコンダより
  


自由詩 よるのひるね Copyright AB(なかほど) 2016-09-28 19:45:35
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