あゆみ むらさき Ⅲ
木立 悟





雨を呼ぶ声
空をくぐる火
曇の牢に動く影
水の径を追いつづける午後


涙で目を洗うとき
ふと片目に残る光
三日月となり常に静かに
銀と灰を重ねてゆく


多くの暮れ
多くの熱流
つらぬく声 つらぬく色
すべてのすべてに伝わる震え


砂浜へ寄せる波に
無数の蟻が居て
目が合う度に唱う
ひとりだけを視てと


ひとりの足跡は
ひとつでしかなく
振り返れば満ちる稲妻
白と鉛のにおいばかり


築いたものを壊しつづけて
いつのまにか数千年経ち
誰も思い出さなくなった頃
けだものは再び現われる


ひとつの灯りから来る糸が
常に常に夜に触れる
みなもとを望み かなえられずに
むらさきとむらさきのはざまを過ぎる























自由詩 あゆみ むらさき Ⅲ Copyright 木立 悟 2016-09-21 09:52:45
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