いつもの前兆
坂本瞳子

忘れていた
左側の肩甲骨の少し内側の背骨に近いところ
ここに熱を感じるときは高熱を発する前兆

気持ち悪さ
むかつき
身体中の節々の痛み
悪寒
種種雑多がごった煮されたように
悪いものすべてがこの身にふりかかる

体温計で測ったが最後
三八度の掲示を見るや
重病人と自覚し
すべてのやる気を失い
ただ眠ることに
ただ汗をかくことに
専念する
そして覚悟を決めて赴くのだ
白い巨塔へ

そして回復の後は
また忘れるのだ
肩甲骨の内側の熱がなにを意味するのか
高熱など
一年に一度も出すものか


自由詩 いつもの前兆 Copyright 坂本瞳子 2016-09-16 00:52:28
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