蛾になりたい
ピッピ

ねえ、いいから
と手を引っ張られ
誰もいない女子トイレに連れて
から
 か
  ら
   少しだけ開けた窓こぼれる斜陽突き刺す
笑顔 舞い込む蝶々を、ちょうどよかった
と少しだけ骨張ったその掌が優しくつつんで、くしゃ
くしゃっ

 という 命が終わるのに必要な音を聞いた

  わたし、自分より弱い者が好き

 含羞んだ 突き刺す斜陽
          ら
         か
       から
      閉まる窓舞う羽根命だったもの
     わたしね、蛾になりたいの、生まれ変わったら
    自分勝手に、行きたい
僕の中で回っていた時計の歯車の音とは
 別の歯車の音が聞こえ始めた

  それじゃあねとにべもなく足早に上履きの音が消えて
 鍵も掛けられていないその部屋で茫然自失
あの子が最後に呟いた

うそだよ


 なにを指したのかも知らずに

   赤い色はギターの色
    あの子の蝶が死んだとき
     何色の血が流れていたのか
  
蛾になりたい
 わけもなく醜さで分類された
  この世界に生きていたい


自由詩 蛾になりたい Copyright ピッピ 2016-09-07 20:43:47
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