黒く指された脊骨
アラガイs


曇天に忙しないあたま
陽のサウナからながれ落ちた汗
染みついた女鯒の滑りのようだ
冷珈琲が苦い
台所で背を向けたまま
居間のテレビから声が途切れることもない
「男はつらいよ/噂の寅次郎」
あの笑いもなつかしく
夜は冷たい風に靡かれ
雨の時刻を予感している
背骨のない柱時計
老いた母親を病院へ連れ添う
明日は予定があるらしい
予定はあるのがいいのかわるいのか
もうわからなくなってしまっている
「おまえは一体何をして生きてきたんだ」
気になって
壁に掛けた白黒のポスターを眺めた
サングラスをかけたジョンの眼が
今日は内から光ってみえた。








ジョン 「ジョンレノン」ビートルズ


自由詩 黒く指された脊骨 Copyright アラガイs 2016-09-06 23:17:59
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