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Lucy

羽音で目が覚めた
驚いて明かりをつける
汗だくで寝ていた
汗の匂いに寄って来たんだな
いったいどこから入ってきたんだ
窓は閉めていたのに
ベープマットをセットして寝る
でもまたも高い羽音が耳につき
とても寝てなどいられない
もう一度明かりをつけて起き上がる
目を凝らす
ぶんたか飛び回るにっくき奴が視界に入る
ベットの上に立ちあがったり降りたりして
真夜中の無言の乱闘をひとり繰り広げた挙句
ついに仕留める
シーツの上で叩き潰すと
意外な量の
真っ赤な血
どこでこんなにたらふく吸ってきたんだろう
自分の体をくまなくチェックしてみたが
どこにも刺された跡がない
誰の血だかわかりゃしないと思うと
気持ち悪くなり
シーツを剥がして
眠りにつく
朝 家人に蚊に食われなかったかと聞くと
食われていないという
ますます気味が悪い
人間じゃないものの血かもしれない
翌日の昼過ぎになって右の手首と
ひじの間の内側の皮膚に
ぽつりと赤い点が
これって虫に刺された跡か?と思っていたら
翌々日になって痒くなり始め
ツベルクリン注射の跡みたいに怪しげに赤く腫れてきた
私の血だったのか・・?
麻酔をかけられ存分に血を吸われる際は
痒くないという
中途半端に刺されたときはすごく痒いのに
ではなぜせっかく獲物に気づかれず吸血に成功した後で
あんなにものすごい羽音を立てて飛んだのだろう
たっぷり栄養を取ったのち繁殖するために
恋の相手でも探していたのか?
惜しみなく提供したのに即座に無駄になった私の血
なんだか
損したような気がする・・と言うと
「それちがいますよ」と同僚につっこまれた






自由詩 提供 Copyright Lucy 2016-09-04 00:41:49
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