空色の足跡(わたしから「僕」へ)
葉月 祐
夜を跨ぎながら
深く 吐き切れない程に
わたしは息を吸いこんだ
昔の自分の欠片が
至るところに残っている
当時はそれにすら
気付く事も無かった
気付かないふりを 見ないふりを
重ねに重ねて
長い間 逃げていたよ
わたしは ごめんね と
路上に佇む昔の「僕」の幻に声をかける
あなたは今よりも幼いわたし自身だ
ずっと向き合う事も避けて
暗く重たく冷たい
色すら無い孤独な夜の中に
わたしは「僕」を置き去りにした
ボロボロのスニーカーを履いた
「僕」だけを残して
あの時あなたをひとりきりにした事
何を言えば 何をすれば
「僕」は救われるのか
わたしは許されるのか
ずっと考えてきたけれど
答えは見付からない
昔の自分に許される
そんな日が来るのならば
一緒に朝陽を見たいと思う
あの夜を共に抜け出して
今も自分の一部を捜しては
直視出来ない「僕」と出逢うけれど
少しずつ
わたしの中に「僕」を抱いて
朝を迎えられたら良いなと願う
「僕」の幻は 二度と消える事は無いだろう
だから
今夜もあの直線道路に立ち
わたしは「僕」を待っている
あなたにどうしても伝えたい事があるのだ
『もう夜は怖くないよ』と
夜に響き渡る自分の足音に
いつも怯えていたあの日々はもう来ない
お気に入りの空色のコンバースを履いて
好きなだけ夜を跨いで
溜め息でも何でもつきながら
朝に向かって歩いて
わたし達一緒に 足跡を残していけたら良いよね
これからも ずっと