芝生に
末下りょう

耀う光のなか 疎らに枯れだす芝生
なにを疑うでもなく
彼女はそこに寝そべり
湧出する表層にみをあずけて
こちらをおもしろそうにみつめている

薄絹のみなれないスカートを
潮風にさらし
素足を芝に劇的にもて余すからか
入り口のない部屋の死体と
奇術のように
組み合う指は 、
背中にかくれた永遠の低まりのほうにはぐれていく

散りばめられた風向きに
いまさら轟かすべきものもなく

夕映えに際立つまでの芝生に
口をよせて
彼女は多分、そんなふうにして
ぬぎたりない人間の秘密を
めざましいさまで放棄していく


自由詩 芝生に Copyright 末下りょう 2016-08-24 03:18:55
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