野の花
ただのみきや
花よ
いま震えている花よ
見えない風の手が怯えさせるか
それともやさしい愛撫に
花よ
人も同じ
誰かの心の中 将来のこと
見えないものに心を乱されて
わたしたちは少し似てはいるが
君はしなやかで控え目
蝶のように訪れる誰の目にも麗しい
生憎わたしはそうではない
減らず口で
欲求に引きまわされて歩きまわる
居場所なんて在って無いようなもの
ようするに根無し草だ
君は一途に日の光を愛する
与えられた場所が日陰になっても
そこからそっと見つめている
精一杯手を心を伸ばし続ける
人は我がまま無いものねだり
しつこいくせに飽きっぽく
昼は夜のように寝ぼけたことを言い
夜は昼のように興奮して眠らない
野の花よ
わたしたちの生涯を比べてごらん
君を儚いなんて呼ばわるのは
傲りの物差しだ
君の生涯には一分の無駄もなく
君の立ち姿には少しの嘘もない
どうかこれからもこうして
時々そっと話そうじゃないか
この意識が静かに果てるまで
更新され続ける油絵のように
尚も濃くなる夏の記憶の青草に縁取られ
黄昏ながらも燃えている
光と影を重ね着て
そっと
揺れながら はにかんで
微笑むように
咲いていてはくれないか
可憐な友
黄色い花よ
《野の花:2016年7月26日》