百合
るるりら


【百合】


昨夜の薪が
まだ ほんのわずか ちろちろと している
寝る前に見た 夜光虫のまたたきと
星々とのまたたきとの
違いがわからなくなくなってしまった
ほんとうには 生き物と星に違うところは無いのではないのではないかと
感じたのは 夢だったろうか現実だったろうか
気がつくと 

あさやけいろした
しんせんな波が 
たぷんと 
岸に届くと同時に
いちばん 早起きのセミが 歌いはじめ
鳥のつぶやきごえは そこはかと、
覚めた波のゆさぶりとともに
まだひそかなこずえで前奏曲を始めている

あっという間に 登った太陽は、やっぱり 赤かった
わたしは知った
真っ赤な太陽とは、 一日一日の始末を空を見てきた人々の言葉だったと 
なんという くれないだろう
月も出ていて ユリの鱗茎のように 白い
なんという 対比だろう こころが躍り
みなで 沖に泳ぎはじめた


さあ どこまでも 限界まで 今日一日は 泳いでいこう
この島のすみずみを 泳いでいこう
どこまでもどこまでも いけそうな気がする

途中ですこし陸に あがった
巨大な地層が露わになっている
恐竜もきっと岸壁に呑み込まれているだろう地層の下に
立ち
燕の子らのように 大きな口をあけ、上を見上げると 雫が落ちてくる
まみず

無人島の真水
潮のにおいのない 無の味が 
命ある わたしの喉を ひんやり通ると
わたしの命は ほほえむ
たった数滴で さらにどこまでも 泳いでいけると確信した

わたしたちは、遭難者だ
だれも助けてはくれない
かならず 夕刻には薪のところへ帰らなければいけない
そう思ったときには夕刻に もう近づいていた

仲間の中にへたる者も でてきた
簡単な筏も作ってはいたが みながへたってきたので木材を
泳げなくなった者のために筏にくくりつけた 
いさましい者は先頭で みなを運ぼうとして
身体をそりかえしては もぐるのを繰り返すが、  
先に進むことに気をとられ次第に方向がずれていた

三日月が見えた 
遠く薪が見えた
百合の鱗茎のように僕らは 一塊となって
軌道を修正しあい凍えながら
炎へと 向かった





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詩ヌマデアイ詩テというスレッドで、
漢字二文字の題名で詩を書いてみました。
元号がかわるかもしれないというニュースからの発想です。
http://po-m.com/forum/thres.php?did=316267&did2=867




自由詩 百合 Copyright るるりら 2016-08-02 08:12:03
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