なつのうた
田中修子

次世代のために
誰かがしなければならないから
そうやって
きずだらけのわたしを見ないふり
すんなよ

わたし、うまれなくてよかったんだよ
わたしのおかあさんおとうさん
だれかのおかあさんとおとうさん
あなたたちが
ずうっと幸せに笑っていられたなら

でもね
つらいけれどもう呼吸しているの
誰かにいたいいたい
空白の影を落とすのはおなかいっぱい
だからね

ね、夏が来ているよ
夜道をあるいていたら
アブラゼミの幼虫が
公園に向かってずしずしあるいていた
ほたる石色の羽を伸ばすのかな

そんなふうにね
あしもとにあるよろこび
それから
きちんと木に辿りつけるかなという
むねのいたみ

そういうのがきらきら光るよ
わたしのいとしいものたち
ぶわんと白い雲を湛え
体を打つ清冽な青い陽射し
そんな季節を体を広げて迎え


自由詩 なつのうた Copyright 田中修子 2016-07-18 07:39:35
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