星丘涙

微細な雨粒に濡れ
その森へと足を踏み入れる

目を凝らしさらに進む
身も心も癒されてゆく気分だ

コウモリが空を舞いとび
草むらで山鳩が鳴いている

くるくると回る空を見上げ
幻想の世界へと迷い込む

白い服の少女が手招く

気が付くと古い井戸の底
鬼の様な私の顔が映る

私は私に怯え震えていると
少女がなおも手招きをする

気が付くと私ひとりきり
少女は消えてしまった

迷い込んだその森は
私を飲み込み
幻想世界の中を
私はよたよたと歩く

烏が鳴いている

私は死んでしまったのか?
死も生も区別のつかぬまま
歩き続ける

森の出口らしき世界が広がり
何時ものコンビニの店員が
「いらっしゃいませ」と声をかける
安堵のため息をつき
ビールを買って店を出た

目の前に森があった
 


自由詩Copyright 星丘涙 2016-06-30 21:25:57
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