うつわ みどり
木立 悟





野と街の境に空が落ち
生きものはおらず
水は澄んで
底には岩と樹がゆらめいていた


細長い午後の天蓋を
幾度も廻る光の帯
窓をすぎる曇
疑念の花


上には何も無く
地は雨の色に満ち
瓦礫にころがる傘
水の声に目をつむる


ひとつの曇
ちぎれる曇
渦を持ち 花を持ち
笑みを持つ双つの曇


何も無い場所に
音が現われ 色を撒き
手のひらの水に龍を描き
底に底に沈みゆく


崩れたままの池を
樹が網のように見下ろしている
すぎるものすべて水紋に消え
ひとつの色だけが響いている


























自由詩 うつわ みどり Copyright 木立 悟 2016-06-28 20:31:26
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