やぶいた夢
伊藤 大樹

呼吸を阻害されて、コンビニで売られている愛を、残らずレンジでチンして放課後食べる。季節が人工的に作られたものだってことぐらい、街路樹を見ればわかる。吹き抜ける風はいつだって戦争の味がする。かわいいものがごっちゃになって、くまのぬいぐるみから綿が飛び出していても、かわいいっていえるきみの感性を、きみは不思議なくらい愛していた。
世界がある日突然、引きちぎったビーズのアクセサリーみたいにちらばって、青空とか海になったって今でも信じてる。ほんとはぜんぶ美しいんだって知ってるし信じてる。だから女子高校生でいることに何の救いもない。きみを死から守りたい、あけすけな感情をまるごと全部ビニール袋に包んで死なないように何度でも味わいたい。レンジでチンすれば何度だっておいしく味わえる、そんなありきたりな感情をきみにあげたい。


自由詩 やぶいた夢 Copyright 伊藤 大樹 2016-06-24 20:10:18
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