平熱
葉leaf



平熱の日々には
ひとの軸が熟していく
高熱のうめきも低熱の苦しみも
何もないので表面はなだらかであるが
ひとの上へと落ちてきたものは
どこまでも着実に収蔵され
ひとを通過する静かなめぐりが
遠くの灯りへとひとをいざなう
ひとの中に広がる水平線から
徐々に朝日が昇り
最も美しい光で静止したとき
その瞬間をとらえて
ひとは完璧な果皮に覆われる
ひとの外にはたわんだ金属の類
錆びることがないために
刻々と鋭くなっていく金属に触れられて
平熱が静かに破られる
傾いた世界から
一個の果実が転げ落ちる


自由詩 平熱 Copyright 葉leaf 2016-06-21 05:46:38
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