寝床川底
蒼木りん

田んぼのわきを流れる

水を引くための小さな川

たぶんきっと

顔を上げれば

向うには山が見える

私の視線は川の中だった

銀色の魚の腹がひるがえったあとに

裸足が川底の泥を巻き上げて走る

ビール瓶の破片が尖っていた

予感というより想像どおりにそれは

足の裏をザクリッと刺して

血の煙が立つ

ぱっくりと傷口が開く


私は

私の手がシーツをぎゅっと握っているのに気がつく


大人はいない

泣いてパニックになっている場合ではない

傷口を押さえて早く家に帰り

病院に行って縫ってもらわなければ


冷静に考えて

私はいま

大人であった

醒めているが瞼は閉じたまま


高熱の床で

ときどき菌が私の身体を刺すので寝返りを打つ

朦朧として見た想像である





未詩・独白 寝床川底 Copyright 蒼木りん 2005-02-26 10:41:38
notebook Home 戻る  過去 未来