忘却
鷲田

春の日差しに照る光
影と陽の二重音奏は
日常というリズムを奏でている

自然の一つ一つに
咲き始めた根を張る花弁に
青空のキャンパスを渡る一片の白雲に
私達の一つの想いに
無数の生活に
重なり、成り立つ社会という大きな文明に

我を忘れた心境は自然と融合する
無意識の形が自然を成す
私が私を意識する頃
過ぎ去る日々は憂鬱の鎧を身に着けている

澄み渡る小川は
その水の流れを自然に作る
我を忘れよ
自我を忘れよ
山々は何も考えずに
悠然とした景色を形成している

キャンパスには風景画
自然は私達の心を描く透明な影
私達はリズムの一つ
自我と言う意識は
傲慢という思い上がりの産物

一片の花弁が風に舞う
ユラリ、ユラリと
ゆらり、ゆらりと
何も言わずに、何も語らずに
5月の陽射しはただその光のみで
言葉を失くしている


自由詩 忘却 Copyright 鷲田 2016-05-29 19:41:16
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