連窓歌
木立 悟




荒れ野が荒れ野に流れ込み
丘の上の空へと打ち寄せている
冬に冬が接ぎ木され
咲く花は記憶の色をしている


脚から生まれた羽を育てて
小さな小さな双つの稲妻
夜の窓に重なりながら
夜の鉄を伝わってゆく


風が風を離れては去り
音はふいに音を失くす
揺れ傾く動きばかりが
通りに沿って立ち並ぶ


火の腕が雲を掘り起こし
さらに高みへと放ってゆく
家々の灯に照らされぬ歌
火の描く文字を見上げる歌


空から水へと落ちてきて
溶けずに浮かぶその色は
一本の短い髪の毛だった
やがて再び昇っていった


いつかひとつの歌になって
雲が見え隠れする息つぎをして
静かにここへ戻ってくるのか
ほつれた光の花を手にして


からだはすべて雪でいい
人から風への描線が
窓を白い羽にする日に
心は緩くたたずんでいる









自由詩 連窓歌 Copyright 木立 悟 2005-02-25 17:20:38
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