連窓歌
木立 悟
荒れ野が荒れ野に流れ込み
丘の上の空へと打ち寄せている
冬に冬が接ぎ木され
咲く花は記憶の色をしている
脚から生まれた羽を育てて
小さな小さな双つの稲妻
夜の窓に重なりながら
夜の鉄を伝わってゆく
風が風を離れては去り
音はふいに音を失くす
揺れ傾く動きばかりが
通りに沿って立ち並ぶ
火の腕が雲を掘り起こし
さらに高みへと放ってゆく
家々の灯に照らされぬ歌
火の描く文字を見上げる歌
空から水へと落ちてきて
溶けずに浮かぶその色は
一本の短い髪の毛だった
やがて再び昇っていった
いつかひとつの歌になって
雲が見え隠れする息つぎをして
静かにここへ戻ってくるのか
ほつれた光の花を手にして
からだはすべて雪でいい
人から風への描線が
窓を白い羽にする日に
心は緩くたたずんでいる