KANASHIMI
やまうちあつし

ある朝目覚めて
ふと
青い上着が欲しくなる
そこで風呂場に行って
蛇口をひねると
じょぼじょぼと溢れだす
かなしみ
浴槽がいっぱいになるまで
五分とかかるまい
白い上着を浸しておけば
夕方までには
すてきな上着
青いかなしみの
ジャケットを羽織って
街へと繰り出そう
犬は盛んに吠えるだろう
正直でない私に
猫には黙殺されるだろう
正直な私でさえ
躍り出た月
薄暮の刻に
かなしみは鳥の姿に戻り
すべての空へ


自由詩 KANASHIMI Copyright やまうちあつし 2016-05-23 14:45:37
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