うつくしいもの
Lucy


初夏の夕暮れ
やわらかい風に吹かれながら
玄関先にしゃがんで
ビオラの花柄を探しては
摘みとる
こんもりと咲き茂る寄せ植えが
あたらしく
生きかえるのが好き

いつからだろう
季節が巡るたび
何度も繰り返している
おだやかなひととき

 「おかあさんただいま
 今日の晩ごはんなに?」
 公園から走ってきたのだろう
 息を弾ませて
 小さい息子が笑顔で立っている

 ささやかな楽しみは中断される
 「そうだねーなにが食べたい?」
 「ハンバーグ!」
 「いいよ、じゃ大急ぎで作るから。
 手を洗って、汚れた服は着替えてね」
 ・・・

うつくしいものは
通り過ぎてきた情景の中に在り
振り返る時にだけ
こちらを見つめ
ほほえんでいる


自由詩 うつくしいもの Copyright Lucy 2016-05-21 15:14:23
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