うつくしいもの
Lucy
初夏の夕暮れ
やわらかい風に吹かれながら
玄関先にしゃがんで
ビオラの花柄を探しては
摘みとる
こんもりと咲き茂る寄せ植えが
あたらしく
生きかえるのが好き
いつからだろう
季節が巡るたび
何度も繰り返している
おだやかなひととき
「おかあさんただいま
今日の晩ごはんなに?」
公園から走ってきたのだろう
息を弾ませて
小さい息子が笑顔で立っている
ささやかな楽しみは中断される
「そうだねーなにが食べたい?」
「ハンバーグ!」
「いいよ、じゃ大急ぎで作るから。
手を洗って、汚れた服は着替えてね」
・・・
うつくしいものは
通り過ぎてきた情景の中に在り
振り返る時にだけ
こちらを見つめ
ほほえんでいる