葉leaf

雨が降ってくることもなければ
泉が湧くこともなかった
川は面に表情を走らせて
風を受けながら凡庸な経路を流れていくだけだ
山の中の細い渓流から始まり
川底の石や魚と戯れ
やがて里に下りて農薬が流れ込み
事業排水や生活排水が流れ込む
それでも雪は融けず海へは至らなかった
一人の人間に一つの川
天啓も降らず機知も湧かない
世間の風の中で表情を繕う
廃物で濁った凡庸な川
始まりも終わりも忘却され
ただ今を生きる容量のみで
満ち足りて完了している川
誰もかれも一つの川に過ぎない


自由詩Copyright 葉leaf 2016-05-20 01:44:25
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